彼らの名はゴレンジャー。 江戸川総指令の元、アカレンジャー・海城剛、アオレンジャー・新命明、キレンジャー・大岩大太、モモレンジャー・ペギー松山、ミドレンジャー・明日香健二の5人で結成されたチームだ。 ゴレンジャースーツを身に着けた彼らは、黒十字軍の攻撃から日本の平和を守るべく、戦い続けるのである。
そもそもこの作品はネット局改編のために、毎日放送制作の「仮面ライダー」シリーズを失ったNET(現テレビ朝日)系が送り出した作品。 それがライダーをしのいで大人気になってしまったのだから、世の中何が起きるか分からないものだ。 ちなみに原作はもちろんライダーと同じく石森章太郎。
なんと言っても現在まで放映が続いているスーパー戦隊シリーズの源に位置する作品であり、集団ヒーローという形式を見事に作り上げた作品である。 もっとも、集団ヒーローというのがそれまでいなかったわけではない。 だがこの作品が一味違ったのは、集団ヒーローものの落ち着くべき姿を見せてしまったことだろう。
まず主人公側が複数で相手は一人。ある意味卑怯とも言えるこの構成のため、戦いにおける緊張感は望めない。 そして主人公が複数ということは、それぞれの見せ場がその分減ってしまうことを意味する。 しかし複数なので、各人が外見からして個性的であることが必然となる。
ということで出来上がった作品はどうなったかと言うと、カラフルな5人組が半分ギャグのアクションを毎回同じようなパターンで見せるというものになったのだ。 個性を出すには色違いが一番。ということで全員色違いという、現在まで引き継がれている伝統がここに確立する。 しかし各人の見せ場が少ないので、得意技を見せるくらいしかやることがない。すると毎回同じようなパターンの戦いになってしまう。 そのままではワンパターンで退屈なだけになってしまうが、色違いで見栄えがするアクションに磨きをかけ、見ていて楽しいアクションにすることで飽きにくいようにする。 と、なると元々緊張感がないので、戦いが半分ギャグになってしまう。
…なんか悪口を言っているようだが、そんなつもりはない。 そもそも「仮面ライダー」でフォーマットが確立した等身大ヒーローのアクションは時代劇の殺陣がルーツである。 そして時代劇の殺陣とは戦いを見せるものではなく型を魅せるものである。 そう、この作品は原点に帰り、ヒーローの手に汗握る戦いを見せるなどというのではなく、型として洗練されたアクションを魅せる作品になったのである。 見ていて安心できる、型としてのアクション。それのどこが悪いものか。
この、「型と化したお約束の戦い方」はその後の多くの特撮作品に影響を与え、現在の作品にもその傾向は見られる。 ゴレンジャーがその後の特撮作品の方向性を決定づけてしまったのである。全くもって凄いことだ。
かくして特撮作品の新たなる教科書となったこの作品だが、他の作品とは一味違うところがもちろんある。 いや、教科書としてあまりにも強烈過ぎたために、他の作品が真似できなかったというか何というか。
一言で言えば、とにかく「変」なのである。シュールなのである。 例えば、ゴレンジャーと言えば名物のひとつがなぞなぞだ。 明日香や子供の太郎が出すなぞなぞを、キレンジャーこと大ちゃんが考え込むというのがよくあるパターン。 と、そこで、事もあろうに大ちゃんは戦闘中に敵になぞなぞの答を訊いたりするのである。 それだけならまだしも、敵は素直にそれに答えるのである!
更には、敵が唐突になぞなぞを出すなんてこともあった。 もちろん我らが正義のゴレンジャーの面々は、毅然としてその答を言うのである。
特に第19話予告編以降、予告ナレーション自体がなぞなぞを出題するものになったのも見逃せない。 予告が全然予告になっておらず、楽しげな音楽に合わせて単になぞなぞを出題するだけという壮絶なものになったのだ。 一応映像としてはゴレンジャーが活躍している様子が映し出されているのだが、ミスマッチもはなはだしい。 ここまで来れば大したものだ。 さすがに第42話から普通の予告に戻ったけど。
それだけではない。 敵は揃いも揃って怪しい変な格好の怪人だが、なんと彼らは堂々と町中に現れたりしているのだ。 町中を走り回ったり、なんと売店に新聞を買いに来たり。 それだけならまだしも、町の人はそれを気にする様子もないのである!
とにかく、こういった凄いセンスは他の作品の追随を許さない。 こんなシュールさが大爆発するのは中盤辺りだが、序盤から早くもその傾向は表れているので侮れない。
また、凄いセンスもさることながら、本筋のストーリー展開の方も要チェック。これまた従来のヒーローものと違って、なかなか新鮮なのだ。
普通のヒーローものならゲストキャラが登場し、ヒーローがそのゲストとの交流を経て事件に迫っていくというのがストーリー展開の定石パターンである。 例えば敵怪人に肉親を殺された女性や子供なんてのが実にありがち。
が、この作品は違う。 ゲストらしいゲストが登場しない話が実に多い。 更にゲストが出てきても、そのほとんどがイーグルもしくは黒十字軍の関係者で、純粋な一般人は非常に少ない。 すなわち、黒十字軍の活動をイーグルがすぐさまキャッチし、ゴレンジャーが活動を始めて首謀者の怪人を倒して終わり。 そんな話ばかりなのだ。
こう言うとワンパターンなようだが、いやいやそうとも言えない。 そもそもイーグルVS黒十字軍、この組織戦こそが本作の基本である。 他のヒーローものだとヒーローは大抵単独行動なので、巨大な悪の組織としては邪魔されるまで放置しておくというパターンが多い。 悪の組織の作戦で、打倒ヒーローを直接の目的とするものは案外少ないのだ。 が、黒十字軍の相手は国際組織である。非常に大きいのだ。 だからまず、イーグルを叩かないことには黒十字軍はおちおち破壊工作もできない。
かくして黒十字軍は、やたらと打倒イーグルのための作戦を展開する。 そしてイーグルは巨大なので、その手段も様々なものになる。 イーグルの新兵器を奪う、イーグルの補給路を断つ、イーグルの基地を破壊する、…などなど。 更にゴレンジャーに対しては、その活動拠点さえ分かれば倒すことができる。黒十字軍はそれだけの実力を持っているのだ。 だからゴレンジャー基地をひたすら探す。しかしイーグルはひたすら隠し続ける。 またイーグルも防戦一方ではない。積極的に黒十字軍にスパイを送り込み、その動向を探る。
てな具合に、様々な形で組織的な攻防戦が展開される。これのどこがワンパターンなものか。 集団組織と言えば、例えば「ウルトラセブン」の地球防衛軍なんかを思い出すが、あれにしても実際活躍していたのはほとんどウルトラ警備隊6人だけだった。 だがイーグルは、確かにゴレンジャーがメインではあるが、全員銃を取って黒十字軍と戦うのだ。 その様子がしっかり描かれているのだ。(まあ活躍するよりは撃ち殺される方が多いけど…) 単なる集団ヒーローではなく、組織レベルの戦いにまでグレードアップさせて描いた本作、むしろなかなか新鮮ではないか?
最後に余談なのだが、OPでのゴレンジャーの面々の紹介。なぜか5人が順番通り紹介されず、2番目のはずのアオが5番目になっている。 これはなぜか?
そもそもアオレンジャーこと新命明を演じた宮内洋は、「仮面ライダーV3」や後の「快傑ズバット」で超有名な生きたヒーローとでも言うべき人である。 が、ゴレンジャーの話があった時は運悪く(?)レギュラーを何本も抱えていて、とてもリーダー役などこなせる状態ではなかった。 それでアオの役に決まったのだが、それを不服に思った彼は、御大石森章太郎の所まで「アカじゃなきゃやらない」と談判しに行った。 なんというヒーロー魂!
そこで石森章太郎、二大隊長にしてアオは一匹狼的な設定にするからどうだ?と話し、交渉成立。 かくしてアオはアカとほぼ対等のキャラクターとして描かれることとなったのだ。
で、OPの話に戻るのだが、キャストの最後と言えばいわゆるトメ、ナンバー2のキャストを紹介する位置である。 恐らく、順番を崩してまで自らをトメの位置に置くことにより、アカとその他4人じゃない、俺はリーダーじゃないが他の3人とも別格なんだぜ、とアピールしてるのではないかと思うのだ。 いや〜、さすが宮内洋。 なお、キャスト全員で言えば、トメで紹介されるのは江戸川総指令こと高原駿雄である。なるほど。
ちなみに初期の話ではいくつか、新命明が登場せずにいきなりアオレンジャーが登場する話がある。 スケジュールの都合で出られなかったのだと思うが、そんな調子では確かにアカの役は無理だ。 とか言いつつ、裏番組の「仮面ライダーストロンガー」終盤において歴代ライダー総登場という時、素顔で一番多く登場したのは宮内洋演じるV3・風見史郎であった。 まあ同じ東映特撮ということで、逆にスケジュールの都合をつけやすかったのだと思うが。
しかしとにかく、ヒーローをやらせれば日本一の凄い人だ。 型にはまったリーダー役を運命付けられた海城剛と異なり、かなり自由度の高かった新命明。 そういう役を得たことが、むしろ幸運だったとも言えないだろうか。
実際、新命明の主役編は他の4人の主役編とは明らかに違う。 変身前はひたすら傷つき、やられ、ボロボロになり、しかし最後には大逆転。 V3とノリが同じなのである。他の4人の話は普通なので、完全に浮いている。 しかしこれこそが宮内美学の現れ。ファンにはたまらないはずだ。
以上のように様々な要素が詰め込まれ、戦隊ものの元祖となっただけではなく、ヒーローもの全体についてもエポックメイキングとなったこの作品。 ヒーローものを語る上で、決して外せない作品である。
ゴレンジャースーツはイーグル科学者陣が作り上げた強化スーツ。 ゴーグルの部分に、5人それぞれ異なる武器が装着されており、また腰の小型ロケット・バーディーで空を飛ぶことも可能。 スーツを着用することを転換と呼ぶが、転換する際に高圧電流が体を流れるので、訓練で体を鍛えてかつ高度な精神集中力がないと転換することはできない。
第43話でゴレンジャースーツの秘密が奪われるという最大の危機が訪れたため、そこでニューゴレンジャースーツを開発。 外見は全く変わらないのにどこら辺がニューかと言えば、目の部分に装着されている武器が新型に変わったのだ。 ちなみにこのニューゴレンジャースーツの場合、流れる電流は15万ボルト。
ゴレンジャールームはゴレンジャーの本拠地で、スナック・ゴンの地下にある。 しかしその所在は秘密であり厳重な警戒態勢が敷かれている。 黒十字軍は血眼になってその場所を探ろうとしていた。 彼らは何度もゴンまで来てはいるのだが…。ゴレンジャーの5人はいつでもゴンにたむろしているのだが…。
そしてゴレンジャーの装備。 まず最初からあったのは大型戦闘機バリブルーン。プロペラ飛行で垂直離着陸が可能。
またゴレンジャーのフィニッシュ技はゴレンジャーストーム。 モモが出したボールを5人が順番に蹴っていき、最後にアカが蹴るとフィニッシュ! 敵にぶつかって大爆発を起こすのだ。
…と、実はこれ、ウソである。 よく画面を見ると、怪人はボールがぶつかった後でしばらく苦しそうによろけてから爆発する。 ぶつかった時に爆発するのではないのである。 そう、ゴレンジャーストームとはボール状の爆弾が爆発するのではなく、文字通り敵を爆発させるという技なのだ。 ぶつかった瞬間に、すぐに爆発する液体火薬でも注入するのだろうか。とにかく凄い技なのだ。
しかし、そのゴレンジャーストームもパワーアップが図られる。 第27話より、ゴレンジャーストーム・ニューパワー作戦となるのだ。 これはフィニッシュの際、敵の特徴に応じて臨機応変に姿を変える凄い爆弾だ。 あ、これは普通に爆発する爆弾である。
姿を変えるとは例えば、大ナタ仮面に対しては薪に姿を変えた。 それを見て思わず薪割りをしてしまった大ナタ仮面は大爆発してしまったのだ。 といった具合に、敵の心理的・肉体的弱点を突き、少しでも確実に倒すための工夫を行なっている。 逆に言えば、黒十字軍はワンパターンな技で倒せるような甘い相手ではないのだ。 ハードだなあ。
そしてハードな戦いは続き、第42話で彼らはバリブルーンを失ってしまう。 しかしすぐさま新型戦闘機バリドリーンと、地底にも潜れる万能戦車バリタンクが登場。
また、必殺技としてモモが新開発したゴレンジャーハリケーンを使用するようになった。 これはフットボールのような形をしており、5人で敵のタックルをかわしつつパスしたり、敵にタックルして突破したりして、最後にアオの手に渡る。 そこでアオが地に着けたボールをアカがクラウディングトライでキック。 そうして飛んでいったエンドボールは、これまでと同様に臨機応変に姿を変えて敵を確実に倒すのだ。
例えば、大幹部の火の山仮面マグマン将軍に対しては卵に姿を変えた。 生卵を手にした将軍は、生では食えんと頭の火山で瞬時にゆで上げ、うまそうにパクリ。 すると大爆発してしまった。さすが将軍、壮絶な最期だ。
更に、第54話で要塞ナバローンに突っ込んで爆破させてしまった彼らのバイク、ゴレンジャーマシーンに代わり、第55話からニューマシーンとしてスターマシーンが登場。 それぞれレッドスター、ブルースター、グリーンスターと呼ばれる。
また、第67話からアクション担当が大野剣友会からJACに変更。…って関係ないってば。 しかしこの時より、ゴレンジャーハリケーンがより短時間で済む空中パスリレー方式に変更。 そして第69話からバリキキューンが登場。アームがあるただの気球なのだが、とにかく大活躍した。
以上のように、ゴレンジャーの装備は次々にパワーアップされていったのである。
彼らは主にジープ等の自動車で移動するが、その自動車はナンバーも普通だし車検も通しているようで検査標章もちゃんと貼ってある。 さすが世間に怪しまれないよう注意しているだけのことはある。
第64話からは黒十字忍団が登場。ゾルダーを遥かにしのぐ能力を持ち、ゴレンジャーも手を焼く強敵だ。
なお、総統の下には幹部クラスである将軍が存在する。 まず最初に日輪仮面が登場。 こいつは大したことはしなかったが、続いて登場した鉄人仮面テムジン将軍は空中から攻撃するコンドラー爆撃機を導入。 また、続く火の山仮面マグマン将軍は地底要塞ナバローンを使うが、すぐ壊される。 そして最後のゴールデン仮面大将軍は空中要塞の黒十字城、そしてそこに搭載された大型爆撃機バットラーを導入。 バリドリーンと激しい空中戦を繰り広げた。