生ドラムが使えるようにするためには防音壁の弱点を取りのぞかなければなりません。
防音には 質量則と言う 公式のようなものが あります。
遮音性能は 質量と周波数に比例するというものです。
さて この質量則は あくまでも 遮音壁が 平たくて 共鳴しないような構造で
かつ 音が垂直に入射するという前提です。
しかし 実際の遮音壁は 千差万別です。
音も四方八方から 入ってきます。
質量則に従わない ことになります。
従わない所は 二箇所です。
高音側と低音側に 質量則より 遮音性能が劣る所が出てしまいます。
周波数別遮音グラフ模式図
低音側は 2重壁等に出る効果です。
これは 音圧が遮音壁を押すと
その裏の空気が 反発して押し返す現象が起きます。
裏の空気の反発を 仮想「空気バネ」と言います。
遮音壁には 固有の振動数があります。
同じように 空気バネと言われるように それにも固有振動数があります。
この固有振動数が 同じのときに
共鳴して 音があたかも通りやすくなったように なります。
これが 低音側の低下です。
この現象は 通常の造りの壁では100Hzから400Hz程度の周波数で生じることが多いです。
空気バネを起こす空気層が薄いほど 高い音で共鳴を起こします。
逆に空気層が厚ほど低い音で起こします。
空気バネが起こらぬよう吸音材を入れる方法がありますが
完全には防ぐことは不可能です。
この様な低音域の低減を「低音域共鳴透過現象」単に「共鳴透過」といいます。
両面石膏ボード12mm | |
中空層厚さ 単位cm |
共鳴透過周波数 単位Hz |
1 | 411 |
2 | 291 |
3 | 237 |
4 | 205 |
5 | 184 |
6 | 168 |
7 | 155 |
8 | 145 |
9 | 137 |
10 | 130 |
11 | 124 |
12 | 119 |
13 | 114 |
14 | 110 |
15 | 106 |
16 | 102 |
17 | 100 |
18 | 97 |
19 | 94 |
20 | 92 |
中空気層厚さ10.5cm | |
壁面重量 単位kg/m2 |
共鳴透過周波数 単位Hz |
1 | 370 |
2 | 261 |
3 | 213 |
4 | 185 |
5 | 165 |
6 | 150 |
7 | 140 |
8 | 131 |
9 | 123 |
10 | 117 |
11 | 111 |
12 | 107 |
13 | 103 |
14 | 99 |
15 | 95 |
16 | 92 |
17 | 90 |
18 | 87 |
19 | 85 |
20 | 83 |
高音側の低減は どのような遮音壁にも起こる現象で
コインシデンス効果と呼ばれています。
その詳細は 入射した音の周波数と
材の固有振動数
(材全体が揺れるような振動数ではなくて 材が波打つように揺れるような 振動です。)
が 共鳴して
あたかも透過しやすくなるような 現象です。
材の固有振動数は 剛性・厚み・面密度の違いによって 異なりますが
厚みが増すほど 剛性が増すほど 周波数は低減します。
即ち コインシデンス効果の周波数も 剛性が増すほど 厚みが増すほど 低音側になります。
コインシデンス効果の周波数は1,000Hzから5,000Hzです。
下図はコインシデンス効果の周波数で高周波側に落ち込みあるグラフです。
なお下図は2重壁になっていませんので低周波側に落ち込みはありません。
コインシデンス;coincidence英語で「同時」とか「一致」という意味を持ちます。音の周波数と防音材が波打つような振動数が「一致」するのでコインシデンス効果と言われています。
質量則のグラフより 低減させない方法は 次の方法が 上記のことより 導き出されます。
上記対策の内背後空気層を厚くして吸音材を詰め込み著しく違う遮音材を使った遮音壁のグラフです。